大阪都構想・大阪市廃止の住民投票が行われます。
長野県議会議員なので発言を控えていましたが、いわゆる大阪都構想、すなわち大阪市の廃止を問う住民投票が間近であり、かつ、政令指定都市を分割してしまうという初めての試みであり、その影響は日本経済全体にも及ぶであろうことから一言述べさせていただきます。
大阪都構想では、大阪市を四つの特別区に分割するわけですが、言うまでもなくスケールメリットが失われ、毎年必要となる経費は今より増大することになります。毎日新聞が大阪市財政局の試算を報道しましたが、それによると、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト「基準財政需要額」の合計は、現在よりも約218億円増えることになるようです。消防など大阪府に移管される行政事務を差し引いた200億円が不足する計算となります。毎日新聞の記事→ https://mainichi.jp/articles/20201026/k00/00m/040/061000c
賛成派は「デマだ」と大騒ぎしていますが、記事を読めばわかるように、試算の仕方・内容を正確に書いています。もちろん、今、この記事が出ることは、賛成派にとっては極めて不利に働くため、火消しに躍起となるのも理解できますが、そもそも、最初から推進派の松井市長が財政局に命じて試算を出しておけば良かったのに、(出せば不利になるから)出さずに住民投票を実施したことは不誠実と言わざるを得ません。(左遷や雇止めの危険を冒して試算結果を新聞社に教えた財政局担当者に敬意を表します。)
単純に当てはめた試算ですから、これより少なくなるかもしれませんし多くなるかもしれません。ただ、4つに分割してスケールデメリットが生じるのに、大阪都構想では職員を増員する予定はないそうです。すなわち、確実に市民サービスを担う人材が不足することになります。(その分、増員のため必要となる人件費は不要となるため、不足額は縮小すると考えられます。)
本来であれば、不足分を国から地方交付税で交付してもらえば充足できるわけですが、「勝手に分割するのだから面倒みない」と国に言われ、大阪市の時の交付税しかもらえないけど強行してしまった維新のやり方にも問題があると考えます。
大阪市269万人。200万人の「長野県」より多い巨大都市。確かに、市民に身近できめ細かい行政のためには大きすぎるかもしれません。ただ、特別区も60万~75万人と、県都長野市37万人と比べても倍くらいあり、とても身近な区政になるとは思えませんし、何より職員を増員せずに4つの区を運営しようとするなら区民サービスをする人材も予算も不足し、今より市民サービスが相当落ちることは火を見るよりも明らかです。
一度廃止したら元に戻せない大阪市。決めるのは大阪市民ですが、私はデメリットの方が大きいので反対票を投じた方が市民利益になると思います。
追記 「職員を増員する予定はないそうです。」と書きましたが、増員するようです。お詫びして訂正いたします。となると、やはり財源不足になり市民サービスの低下は避けられません。大阪市財政局長は、試算結果について再度尋ねられても「きちっと書いてある」と答えていましたが、松井市長から20分間「厳重注意」を受け、「捏造だった」と謝罪会見を開きました。それが意味することを考えると恐ろしいとしか言いようがありません。